Ginger ale syndrome

主にアニメ・映画・マンガを観ながら読みながら思ったことを書き留めるところです。ロボットアニメが多いです。ネタバレ御免。

「Gのレコンギスタ」3話までのお話

Gレコ、あれだけ待ち遠しかったのに始まってみると時間がたつのが早すぎる。

やっぱり最近のアニメの中でもダントツの吸引力です。

 

先行上映で3話まで見ていたのですが、その時考えていたことを今のうちに。

作品の総括でもなければ3話以降のネタバレもございません。

 

 

 ◆「掘り返す」から「埋める」へ◆

 

さてこの「Gレコ」、富野由悠季監督のガンダムとしては「∀ガンダム」以来の作品です。この間15年ということですから、コロニーの運河をヒゲが泳いでいるのを小学生の時分に観て以来、歳を取った実感がハンパないです。

 

宇宙世紀」という言葉が出れば、業の深い富野信者としては歴史の時間軸にこれを載せてみずにはいられないというもので、特殊な性質をもつ「∀ガンダム」に結びつけるのも地球の重力というやつです。

 

∀ガンダム」といえば富野監督には格別の意図があり、「喪の作業」という側面がありました。「黒歴史」として封じ込められた歴史・文明が掘り返されることで物語が進展することに加え、それまでの作品を再評価し「肯定も否定もする」という意味で、「発掘」の性質と役割を与えられていたわけです。

 

黒歴史」を用いたこの物語空間の広がりはアナザーガンダムたちをも結びつける強い引力を発生させたと同時に、そのつながりをあくまで「可能性」にとどめておくという、ちょっとわけのわからない効果を発揮しました。「リギルドセンチュリーの前の宇宙世紀」が「アムロやシャアのいた宇宙世紀」であると同時に「全く関係のない宇宙世紀」だったかもしれないわけです。これは可能世界とか世界線といった共時的な考え方だけでなく、「宇宙世紀が一度(あるいは何度も)終わったあとの宇宙世紀」という通時的な可能性も排除しません。

そういった空間に新たに加わる形でこれから語られる「Gレコ」は、「発掘」の対になる「埋める」の性質を持っていると言えるでしょう。

 

 

◆「埋める」作業◆

 


「こいつ動くぞ!」現実に 実物大ガンダムを動かすプロジェクト始動 2019年実現目指す - ITmedia ニュース

 

お台場ガンダムにとどまらず、動かすところまで実現しようというプロジェクト。

ガンダム」が現実に与えた影響の大きさがよくわかります。もしこのプロジェクトの展開によって、18メートルとはいかなくても、ロボット関連の技術革新に寄与することがあればすごいことです。

 

巨大人型ロボット、空を飛ぶ戦艦、宇宙空間に住む人々。

未知の技術の先にある世界を提示するという点で「ガンダム」は強力です。しかし現実の技術が進み、あるいは視聴者のSF感覚が洗練されてくると、突飛すぎるモノは逆に現実から離れていきます。

その問題について、「∀ガンダム」は少々夢見がちだったかもしれません。

文明を土に還すナノマシン、月に住みコールドスリープで生き永らえる女王。

一回りして「産業革命」程度に先祖がえりした地球の文明との対比として、月や前時代の文明はトンデモだった必要があるわけですが、先に述べた点では現実的ではありません。

 

富野監督は「∀」をはじめとする過去の作品への反省を「Gレコ」に込めているのでは?と筆者は考えています。

ガンダム」である以上巨大ロボットは欠かせませんが(笑)、一足飛びに大勢の人類を宇宙に住まわせるのではなく、その間を埋めるべく軌道エレベーターという題材を用いた。

軌道エレベーターの構想というのは、世界的にプロジェクトが進められているようです。富野監督が日本の軌道エレベーター学会に参加したという話も聞かれるので、恐らく「今のところ実現不可能だけどもしかしたら実現しそうな未来」として狙いをつけたのだと思います。

 

先行上映の映画館で販売されたドキュメンタリーの中に、戦艦メガファウナの装甲材について楽しそうに語るシーンがありました。彼が「御子達に見せてほしい」と言うのは、固定観念にとらわれない発想を持った子供たち世代が、「Gレコ」をきっかけに軌道エレベーターを実現できるかもしれないという予感があるからでしょう。

宇宙世紀の穴埋め」、「地球と宇宙の間」、そして未来に花開くための種を蒔くという意味で「Gレコ」は「埋める」作品なのです。

 

少し大げさに言えば、「ガンダム」をみながら原発に極限ロボットを備えなかった失敗を、今度こそは繰り返すまいとする再挑戦 をしているのではないでしょうか。

……ちょっと「レコンキスタ」に掠ってみた?ところで終わっておきます(笑)