Ginger ale syndrome

主にアニメ・映画・マンガを観ながら読みながら思ったことを書き留めるところです。ロボットアニメが多いです。ネタバレ御免。

「THE IDOL M@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」(2014, 錦織敦史監督)

よかったです。一本の映画としても、ひとつのシリーズの集大成としても満足できる出来だったと思います。

 

 

「アリーナでのライブ」というアイドルとしてのひとつの到達点を目前に、主人公天海春香の成長を描く。

 

TVシリーズを通して十分に成長した765プロのメンバーの絆は固い。ライブのリーダーに選ばれた春香にも全幅の信頼を寄せ、挫折を抱える後輩矢吹加奈への対応も一任する。

しかし春香は、一人のアイドルでもグループの単なる一員でもない「リーダー」という新たな役割に戸惑い、自分に憧れてアイドルを目指した可奈をなんとか助けたいと苦心する。

 

彼女が可奈にこだわる理由は、可奈がかつてアイドルに憧れていた頃の自分に重なるからだ。挫折してアイドルを辞めたいと泣く可奈を引き戻すという決断が正しいかどうかはわからない。仲間たちの力強い信頼を背に感じるからこそ、苦渋である。

しかし昔の自分を否定したくない、だからこそ「私は天海春香だから」と彼女は可奈の手を引く。今までのすべてを肯定して、皆で「輝きの向こう側」へ行くために。

 

キャラクターの人気が分散する作品であるために、春香とその分身たる可奈のエピソードを重視する構成に不満もあるだろう。もちろんそれぞれが十分に描かれるに越したことはないが、時間の制約がそれを許してくれない。

しかし、疎遠だった母親に歩み寄ろうとする千早や、春香を信頼しつつも心配する伊織の表情に、彼女たちの物語もまた読み取ることができる。

 

アリーナライブという到達点は、同時に彼女たちの次のステージへのスタートだ。

徐々に別々の仕事を受けるようになり、事務所で揃って顔を合わせるのも久しぶりである彼女たちは、同じ時間を過ごすことで「それぞれの道」を歩み始めたことを再認識する。美希やプロデューサーの渡米はその象徴と言えるだろう。そのことに不安や寂しさを感じ、レッスンがうまくいかず対立する後輩たちにかつての自分たちを重ね、そして自分たちを照らすまばゆい夕日をみたとき、765プロの全員がそれぞれに一歩を踏み出そうとしているのだ。

ゆえにこの作品を天海春香ひとりの物語と断じてはならない。

 

いつか憧れた「輝き」はいま目の前に迎える「輝き」、その向こう側へ。

過去と現在と未来を感動的な「光の波」で繋ぐこの作品は、アイマスを次のステージへと運んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

もう、あずささんは可愛いなぁ。